研究概要 |
フェムト秒パルスレーザーは,多光子吸収過程によって透明物質内部にサブミクロンサイズの微細加工を可能にする.また,エネルギー注入時の熱拡散に要する時間に比べてレーザー光のパルス幅が非常に短いため,加工部周辺への熱損傷が少ない.そのため,フェムト秒レーザー加工は,3次元光デバイスの作製に適用される.3次元光デバイスの作製は膨大な数の加工点を必要とし,加工の高速化は重要である.また,フェムト秒レーザー加工技術を用いた爪への情報記録では,加工対象である爪が動くため,瞬間的に高速な加工が必要とされる.高速な加工として,レーザーをガルバノミラーにより高速に走査させて逐次的に加工を行うスキャニング加工法や,干渉を用いて1度に複数の加工を行う並列加工がある.ホログラフィック加工は,並列加工の1種で,任意のパターンを瞬間的に高速に加工できる.さらに,空間光変調素子を用いることで可変な加工を実行できる.本研究では,空間光変調素子をフェムト秒レーザー加工に適用する.空間光変調素子には計算機ホログラムが形成され,読み出し面にフェムト秒レーザーを照射し,レンズにより光学的フーリエ変換することで,加工パターンを形成する.形成された加工パターンはレンズと対物レンズ(40倍,開口数0.65)によりサンプルに縮小結像される.フェムト秒レーザーは,再生増幅型のチタンサファイアレーザーであり,中心波長800nm,パルス幅150fsである.サンプルは,水とエタノールで超音波洗浄を行ったスライドガラスを用いる.加工例として,0次光から外れた位置に9点の加工を同時に行うホログラムを用いてガラス表面に加工した場合,入射エネルギーは11.6μJの場合,9点の直径の最大は2.04μm,最小は1.46μm,平均は1.84μmであった.加工パターンはホログラムを書き換えることで可変にできることも実証した.
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