研究課題
平成16年のレーザーを多層構造で縦励起する技術と平成17年の熱光学(TO)効果による導波路屈折率制御の研究を受け、平成18年度は両者の融合による縦励起制御の試みを行った。これはこれまでのプラスチック導波路レーザーの中でも格段に複雑な構造が要求される。1)基板上へのアルミヒーターの蒸着・パターニングを行い、この上に低屈折率ポリマーによるバッファ層、励起光を導入するポンプ層、レーザー色素をドープし回折格子構造を刻み込んだレーザー層を屈折率を0.01、膜厚を1ミクロンレベルで制御しつつ積層し、リソグラフィーにより3次元導波路化した。さらに、ファイバーを結合するために導波路の両端面を光学研磨した。以上の工程を可能にする技術を開発した。2)TO効果による屈折率制御設計については前年度よりもより膜厚の厚い構造の、内部の温度を見積もる必要がある。このための動的な熱拡散のためのプログラムを作成し、内部のマイクロ秒単位での熱分布をシミュレートした。その結果、もっとも効果的な屈折率分布はヒータ層からの距離に対して2次関数的なプロファイルを持つことが示された。また、アルミヒーターで発生可能な熱量でも十分な屈折率分布が得られる見込みを得た3)得られた屈折率分布を用いてBPM法による励起光の結合状態を、単純な4層導波路モデルを用いて計算した。その結果、ポンプ層を伝わる励起光は条件を変えることで約0.2mmから数ミリの距離でレーザー層に全て吸収されることが、計算の上では確認できた。これにより、屈折率分布がある場合と無い場合で、4)1)のプロセスを用いて、実際にTO制御の縦励起レーザーを試作した。アルミヒーターにパルス状の電流を印加することで、励起光がポンプ層からレーザー層に移る距離が、2/3程度に変化する結果を確認できた。しかしながら、これはシミュレーションにより予見されたほどの大きな変化とはならず、実際にレーザー出力に関してもあまり大きな変化を確認することができなかった。また、プロセスの複雑化により、サンプル歩留まりが低下とサンプル作製時間が長くなった事が、再現性の良い実験を行う上で障害となった。以上の結果を持って基盤研究の期間が終了したが、4)におけるプロセスの改良点や、計算に使用したモデルが問題点を持つこと、サンプル設計の持つ問題点などが、明らかになったため、H19年度以降もこの研究を継続し、TO制御の縦励起レーザーについてはレーザースイッチングが実際に角になるまで、条件の最適化を確認したい。
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応用物理 75・5 (掲載予定)
パリティ (掲載予定)
Journal of IEEEE, Quantum Electronics 42, 4
ページ: 389-396