研究概要 |
本研究では、複雑な内部構造を持つソフトマテリアル中で、ナノサイズの荷電コロイド粒子をレーザートラップしながら試料中の各点における複素電気泳動易動度を測定することで、試料の3次元的な構造や局所的力学応答をナノスケールの分解能で得ることを目指している。 まず,本年度は単一粒子レーザートラップ交流電気泳動を行うためにレーザートラップシステムと広帯域、高分解能での粒子位置検出が可能な検出系の開発を行なった。まず、外部光導入が可能な倒立型光学顕微鏡システムに高出力のLD励起赤外レーザー光を顕微鏡の背面ポートから導入し、これを用いてプローブ粒子を空間内の特定の位置に捕捉することが可能なシステムを構築した。さらに、本システムでは2軸のガルバノスキャナーを導入することで、平面内でトラップした粒子を自由に操作することが可能となった。次にトラップ光に位置検出用のHe-Neレーザー光を重ね合わせて入射し、トラップされたプローブ粒子によるその回折光を4分割フォトダイオード上に結像させることでコロイド粒子位置の高精度検出を実現した。開発されたシステムによりサブミクロンサイズのプローブ粒子を任意の位置に移動させることならびにレーザートラップにより粒子のブラウン運動による揺らぎが抑制され、その運動を100kHz程度までの広帯域で観測することが可能となった。一方で、トラップを強くしすぎると易動度による変位が相対的に小さくなり、測定周波数を狭める原因になることがわかった。さらに、開発されたレーザーピンセットシステムを用いれば、複雑流体中での局所力学物性測定が可能であり、これまでに(1)1次元光ポテンシャル中での荷電コロイド粒子間相互作用の直接測定、(2)ネマチック液晶中でのコロイド粒子間相互作用の直接測定、(3)脂質ベシクルのマイクロマニュピュレーションによる粘弾性測定を行い、有用な知見を得ることに成功した。
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