研究課題
基盤研究(B)
蓄積リングの横不安定性の抑制には、SPring-8で考案されたクロマティシティをシンクロトロン周波数(数kHz)で変調する手法を用いるが、これには、交流六極の磁場または電場の生成、およびその場所でのエネルギー分散が必要である。交流六極の発成法の磁場と電場との比較検討を行った。電場による六極の発生法は静電場においても従来にはない手法であり、交流磁場を用いる際にそれを透過させるために必要な高価なセラミックス真空槽が不要となることから磁場の場合に比べ2/3程度のコストとなることが期待された。実際に電極形状を設計し、電場の発生は可能であることを示したが、ビームとの相互作用を計算したところ、目標の蓄積電流1アンペアではビームのエネルギー損失が大きく発熱の可能性が予期された。また、セラミックス真空槽にはNewSUBARU蓄積リングの予備品を用いることが可能となったため、本研究には当初の予定通り磁場を用いることとした。磁場は交流六極電磁石により発生するが、これについて問題となるコアでの発熱、コイルでの表皮効果を十分に検討して形状を設計し、かつ、そのインダクタンスにより電源の能力が左右されため、インダクタンスが2段階に切り替えることのできるコイルの巻き方を考案し実施した。さらに交流六極電磁石を設置する際に必要なセラミックス真空槽を磁石設置場所に適合させるための真空槽を製作した。この真空槽には位置モニタを取り付けており、ビームを磁石の中心から十分に高い精度で通過させることを可能としている。これはビームが磁石の中心からずれて通過すると双極磁場を感じてビームが振動してしまうのを抑えるためである。実験の対象となるNewSUBARU蓄積リングでは、エネルギー分散を交流六極磁石の設置場所に発生させるための電子光学系の調整が行われ、その条件でのビームの周回が可能であることが実証された。