研究課題
基盤研究(B)
蓄積リングの電流値を制限している要因の一つである横方向ビーム不安定性を抑制する手法として研究代表者により考案されたクロマティシティ変調をNewSUBARU蓄積リングにおいて世界で初めて実施し、コヒーレント振動の減衰時間の短縮およびそれに基づくマルチバンチ不安定性およびシングルバンチ不安定性の抑制に成功した。クロマティシティ変調は、クロマティシティをシンクロトロン周波数で時間変調し、これをエネルギー振動と結合させてバンチ内にベータトロンチューンの広がりを持たせる手法であり、このチューンの広がりが横方向のコヒーレント振動を減衰させ、不安定性によるその励起を抑制する。この手法は、従来から用いられてきた手法すなわち、入射の原理的な困難をもたらす八極電磁石やシングルバンチ不安定性の抑制が困難であり調整が容易でないbunch-by-bunchフィードバックに比べて、それらの短所を持たないという特徴がある。本手法を実施するための装置として、5kHzの交流六極電磁石およびその電源を開発し所定の特性を得た。この磁石によってクロマティシティを変化させるために必要である本磁石の設置部でディスパージョンを持つラティスを新たに開発し、実験に十分なビーム電流を得た。また、磁石を設置するための交流磁場透過型真空槽を製作した。ビームを用いたコヒーレント振動の減衰時間の測定では、通常動作時の減衰時間である放射減衰時間より一桁短い減衰時間が得られた。ビーム不安定性の抑制実験では、高周波空洞の高次モードによる水平方向のマルチバンチ不安定性を抑制することができ、また、シングルバンチ不安定性では、ビームパイプのもつインピーダンスが引き起こす垂直方向のモード結合不安定性を抑制することができた。これにより本手法の不安定性に対する有効性が確認され、大電流でのビームの安定性が得られることが期待されるので、今後、入射効率改善等を行い、さらなる大電流化を検討している。
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第2回加速器学会年会論文集
ページ: 22B08
ページ: 22P054
Proc.of 2nd Meeting of Acc.Soc.of Japan 22B08
Proc.of 2nd Meeting of Acc.Soc.of Japan 21P054