昨年度より継続した機械的疲労試験においてロードセル剛性の不足が問題化した。複数試験片を平行に配置した構造を用いて疲労試験をする場合、一部の試験片が破断した際に発生する負荷変位の増大を無視できる程度に抑える必要がある。このため高剛性荷重検出器の内部開発を行ったが、要求される剛性と安定した出力の確保が相反し、荷重計測の信頼性が著しく低下する結果を招いた。そこで水晶を受感部に使用したキスラー社製の高剛性ロードセルをを新たに購入し、所要の性能を満足することを確認した。今後は安定した疲労試験の実行が可能になる。 上記疲労試験手法の確立の過程において、ワイブル統計を導入することで疲労破壊挙動を効果的に定量解析可能であることが確認された。これに関連する成果を、機械学会年次大会および東海支部講演会において3件の講演として発表するとともに、次年度において電気特性との関連を確立するために必要な「制御された疲労損傷の導入」を実現する見通しを得た。 昨年度に顕在化した当初設計の電極による疲労損傷検出困難の問題に対し、金属ショットキー電極を試験片表面に作製した電極構造による検出法を試みた。損傷による準位の信号が十分に大きければ常温で計測可能な手法が技術の適用性において当初計画のDLTSに勝ると考えられたため、試験的にアドミッタンスの周波数依存性を評価した。しかし電極材料の経時変化によるものと見られる影響により特性が安定せず、問題を残す結果となった。またDLTSによる計測をも実施し、損傷の有無により得られる信号が異なることを確認した。適切な電極構造を見出すことが最終年度である来年度の最大の課題となっており、フライブルク大学において試験片のポリシリコンに電極機能を作りこむことを含め、いくつかの改善策を計画している。
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