研究概要 |
近年、環境問題・省資源に対しての関心は高まっているが、エネルギ需要に関してはこの動きと相反するように増加傾向にある。中でも原子力発電は石油代替エネルギの中核として位置づけられると共に電力供給の主役として果たす役割は増大していくと予想され、発電プラントの長寿命化は避けられない状況となっている。発電プラントにおける主要機器の一つである配管系は、高エネルギ流体を媒体としており、破壊が生じた場合にシステム全体に波及する被害が甚大であると予想されることから、高経年化による欠陥を想定した場合においても十分な安全性が確保されなければならない。加えて、日本は地震多発国であるため耐震安全性には大きな安全裕度が取られている。しかし、配管における高経年部が耐震裕度に及ぼす影響は十分明らかにされているとは言えない。 配管の経年変化により生ずる欠陥としてき裂、減肉が挙げられる。独立行政法人防災科学技術研究所の試験研究プロジェクト「機器・配管系の経年変化に伴う耐震安全裕度評価手法の研究」実施委員会では、これら2つの欠陥が配管系にどのような影響を及ぼすか把握する事を目的として、欠陥を有する直管の繰返し4点曲げ試験と、エルボ部に欠陥を配置した立体配管系加振試験を実施している。本研究ではこの実験で行われた膨大な実験データをもとに、有限要素法による動解析と静解析を組み合わせ,欠陥を有する配管における低サイクル疲労強度の把握を目的とした.配管系の動解析モデルを作成し,動的挙動を再現すると共に,局所的減肉部を有する直管の繰り返し4点曲げ試験,エルボ管の面内曲げ試験,面外曲げ試験,立体配管系試験に対する弾塑性解析を行いマルチ破壊モードの解明に取り組んだ.試験にて確認されたラチェット現象および断面扁平化などの破壊現象を解析により再現することができた.また,得られた破壊予測は実験結果と一致する傾向が認められた.
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