研究概要 |
ソーダライムガラスを供試材として,基礎的な割断実験および有限要素法解析を行った.解析に必要な基礎的なレーザ特性を明らかにし,未知なパラメータを予備実験により求める手法を確立した.シングルビームにより割断実験を行い,き裂がレーザ照射部後方を追従する条件を求めた.高速度カメラにより割断プロセスを撮影した結果,材料の溶融をともなわずにき裂が進展していく様子が認められた.シングルビーム照射の場合,レーザ照射方向を変化させると,レーザ走査経路とき裂の進展険路に違いが認められた.有限要素法解析により,レーザ照射による熱応力の分布を求め,破壊力学的にき裂進展経路を求めた結果,実験結果と良い一致が認められた.レーザ照射方向を変化させると,応力拡大係数が最大となる方向,すなわち,き裂進展方向が変化するが,その方向はレーザ照射方向と大きくずれていた.き裂進展方向の制御を行うため,2点熱源(ツインレーザビーム)の適用について,まず,解析により検討した.その結果,き裂に対して垂直にビームを配置した場合には,ビーム強度比を変化させても,き裂進展方向に大きな変化を与えることはできなかった.他方,き裂と同一直線状で,かつ,き裂先端を2ビーム間に配置した場合,後方のビームの方位および強度比を変化させることで,き裂進展方向の制御が可能であることがわかった.解析に基づいたツインレーザビームの実験を行うため,ツインレーザビーム化加工ヘッドを設計・試作した.YAGレーザの光路上にプリズムを配置し,プリズムのウェッジ角度でビーム間距離を,挿入位置で強度比を変化させる構造とした.各ウェッジ角度において挿入位置を変化させ,パワー密度や分布などの基礎的な特性を測定した.また,アルミニウム合金にレーザを照射し,断面観察により求めた溶融部形状は,実験により求めた基礎的なビーム特性を用いて行った解析結果と良く一致した.
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