研究概要 |
(1)炭化ケイ素粒子強化アルミニウム複合材料を用いて,引張変形および繰返し疲労過程における材料特性変化を中性子法を用いて検討した.引張変形挙動および疲労損傷を明確にとらえる最適な回折面を明らかにするとともに,高精度に測定する手法を提案し,実用に際しての問題点を明らかにすることから,汎用性を高めた. (2)高疲労強度達成のために産業界で広範に用いられているショットピーニング処理材の残留応力分布を高精度に測定する手法を提案した.空間分解能で0.3mmが達成可能であることが明らかになった. (3)疲労強度の向上に有効な浸炭材では表面から材料内部にかけて,炭素濃度が変化するため無ひずみ状態での格子面間隔が変化するが,無ひずみ状態の格子面間隔を評価する種々の方法を検討し,応力測定の可能性を示した. (4)ECAF法にて細粒化された純銅を用いて,応力測定および塑性変形特性を明確にとらえることが可能な回折面を明らかにした.塑性変形を伴う負荷過程においては,塑性ひずみの増加とともに,回折線幅が増加するが,この挙動を明確にとらえるためには,特定の回折面(銅においては,311回折面)に注目することが必要であることを示した.また,疲労過程中での損傷の拡大を,回折線幅の変化に注目して検討したが,応力振幅が十分大きくない場合には,検出困難であることがわかった. (5)部材中の特定の領域の応力および疲労損傷をとらえるために,入射側および検出器側に装着するスリットについて検討した.ここでは,測定領域を1mmまで限定するラジアルコリメータを試作して性能評価を行った.実測によって得られたプロファイルはシミュレーション結果とよく一致し,十分な精度で測定可能であることを示すことに成功した.
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