研究概要 |
本研究では,マクロから結晶粒界の状態に至るまでのマルチスケールの力学的観点から,Bi2223/銀酸化物高温超伝導複合線材について,優れた超伝導特性を実現する要件を提案することを目的とする.微視的構成要素について熱履歴,外的な静的・繰返し荷重に対するひずみを解析し,Bi2223フィラメント破壊の微視空間分布観察と併せ,メゾ的な因子が超伝導特性に及ぼす影響を体系化し,最適化を行う.本年度の成果は次のように要約される. 1)合金マトリックスとしてMgの他にMnを採用するとともに,加圧焼成法を用いることにより,2種類のボイド率が低いBi2223/Ag/Ag-ally複合線材を作製した.AgとAg-alloyの境界を特殊なエッチングを施すことにより明らかにし,画像処理により構成要素の体積含有率を求めた. 2)特殊な超軽量伸び計を用いて引張試験を行い,除荷線から複合則を用いてBi2223の弾性率を求めたところ,130〜140GPaとなり,従来報告されている値と比べおおきく増大していることが明らかとなった.この原因はボイド率の低下であり,ボイド率がほぼ0の予測と一致した. 3)熱履歴の影響について,製造プロセスから製造後の臨界電流(Ic)検査(77K)を経て常温に戻した場合の計算を行い,この状態の残留応力・ひずみを求めた.また,この解析により求まるBi2223フィラメントの破断ひずみは,約0.07%と従来の値と変化はなかった 4)Ic測定の結果は100-120A,電流密度は50kA/cm^2となり,従来の複合線材と比べ約2倍の非常に優れた特性を示すことが明らかになった.
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