研究概要 |
マイクロシステムの実用化は,機械としての信頼性を確保した上で初めて成り立つものである。近年では,バルクマイクロマシーニングによるマイクロ構造体にくわえ,従来は機能材料として用いられてきた厚さが数μm以下の薄膜が構造材として用いられるようになってきたが,その疲労を含む強度特性など,マイクロシステムの設計や信頼性を確保する上での基本的な特性データは皆無である。そこで,本研究においては,高繰返し速度の疲労試験を含め,薄膜マイクロエレメントの機械的特性が評価可能な薄膜機械的特性・疲労特性評価試験システムを開発することを目的として研究を行った。本年度は,昨年度に引き続いて1μm厚および3μm厚のSiN薄膜微小エレメントに対して,試験片幅を種々に変化させて引張強度特性,および曲げ強度特性についての基礎的な知見を得る目的で試験を実施した。その結果,引張強度は試験片寸法,すなわち試験片幅,試験片厚さが小さいほど上昇すること,強度特性は負荷モードの影響を強く受けること,引張強度,弾性係数は成膜方法の影響を強く受けることを明らかにした。さらに,弾性係数に及ぼす結晶粒サイズの影響について,FEM解析により検討を加えた。さらに,マイクロエレメントの一つとして光ファイバを取り上げ,引張強度,疲労強度に及ぼす環境の影響について検討した。この結果,光ファイバは10^<-5>Paオーダの極微量の水蒸気分圧下においても水蒸気の影響を受けて引張速度が小さいほど強度が低下し,かつ疲労強度特性にも水蒸気分圧の影響が現れること,また,一定持続荷重および疲労荷重下においても,水蒸気分圧が大きいほど強度,寿命が低下し,特に疲労荷重下でも時間依存の破壊を生じることを示した。さらに,時間依存型破壊を仮定することにより,引張試験結果より時間依存き裂伝ぱ則を求め,これを元に一定持続荷重,疲労荷重をはじめとする任意応力波形条件下の寿命特性を予測する手法を提案し,これによる推定寿命は実験結果とよくあうことを示した。
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