研究概要 |
今後3年間の研究遂行の基礎となる,超音波探傷映像装置を用いて膜積層材料の幾何学的構造因子評価のための実験的手法および疲労過程の膜材の電気抵抗変化の測定法の基礎的実験を行い,以下の結果が得られた。 1.超音波探傷による幾何学的構造因子評価法の確立 積層材として使用する材料として,銅は0.4mm〜1.5mm,エポキシは3mm〜6mmおよび鋼は2mm〜4mmの厚さとエコーの伝ぱ時間との関係を実測した。その結果,各材料とも原点を通る直線となり,その勾配から求めた材料内の超音波速度は,等方弾性体の波動方程式から計算される縦波の伝ぱ速度に一致した。これにより,本装置において試験片厚さを計測できることを確認したが,測定できる最低厚さは装置の分解能とも関係するので,引き続き検討を行う。一方,樹脂接着界面付近からの探傷映像では,未接着部は白く接着状態に対応した映像が得られた。これにより,表面膜で観察されたき裂部の界面付近では白い領域が多く現れ,内部での損傷状態を推測できる手法として有用であることがわかった。 2.疲労過程における膜材の電気抵抗変化の測定 中央に切欠き円孔を有する膜厚100μmの銅膜の疲労試験を行い,疲労に伴う電気抵抗の変化を四端子法直流電位差法によって計測した,その結果,外見上まったく変化が見られない疲労の初期段階で,電気抵抗値は若干低下した後に増加した.さらに切欠き円孔周辺ですべり線が顕著に観察されるようになると,再度,電気抵抗は減少し,疲労き裂発生の前後で,電気抵抗値は最小の値を示した.その後,き裂の成長とともに,電気抵抗値は再び増加した.このように,き裂発生以前においても,電気抵抗が大きく変動する現象は今回の実験で初めて明らかとなり,金属膜材の疲労・電気的特性変化の検討が重要であることがわかった。
|