研究課題
基盤研究(B)
本研究では、MEMS技術を用いて高精度で高信頼性を有するナノ材料物性評価技術を確立することを目指すこととした。具体的には、MEMS技術によって作製される静電駆動型マイクロアクチュエータによって、ナノ材料単体に対して高精度に単軸引張荷重を負荷することができる、静電駆動型ナノ引張試験デバイス(Electrostatic Actuated Nano Tensiletesting device: EANAT)を開発するとともに、ナノ材料の機械的性質および単軸応力下での電気抵抗変化を解明することを目的とする。本研究では、供試材料として、集中イオンビーム顕微鏡を用いた化学蒸着法(FIB-CVD法)で形成されるカーボンナノワイヤ(CNW)を採用した。これは、近年シリコン系材料だけに止まらず、カーボン系材料のマイクロ・ナノデバイスへの応用が期待されていることを背景にしている。EANATを用いてFIB-CVDにより作製した、直径90nmから150nmのCNWの準静的単軸引張試験を実施した結果、ヤング率はばらつきがあるものの、その平均値は59.9GPaを示した。また、破断応力の平均は約4.3GPaであった。さらに、FE-SEM観察によって、CNWの破壊直前に示す非線形変形挙動は、局所的くびれに起因することを明らかにした。本研究では、CNWの機i械特性評価だけでなく、電気特性評価も併せて実施可能な改良型EANATを開発し、CNWの単軸応力下における電気抵抗変化を評価した。単軸応力下でのCNWの電気抵抗変化挙動は、ひずみの増加に伴い段階的に変化するメカニズムであることが明らかとなった。すなわち、ひずみの初期段階では導体であるガリウムによる金属線的な抵抗変化挙動を示した後、CNW中のガリウムナノ細線が断線してしまう。その後、CNW全体の電気抵抗は水素化アモルファスカーボンが支配的となり、更なるひずみ増加に伴って、抵抗変化率は減少する。最後に、高ひずみ状態になり、ナノワイヤにくびれが生じると電気抵抗が急激に上昇し、再度、抵抗変化率が増加する。以上のことから、ナノマシン材料としてCNWを適用できると考えられる。
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