研究概要 |
本年度は,これまで懸案となっていた,位相シフト干渉計測における大きな誤差要因である不要な干渉縞の発生を防ぐ対策を中心に行なった.すなわち,被計測ミラーから戻ってくる球面波と参照球面波とで生成される干渉縞を,FOP(Fiber Optic Plate)上に発生させた.FOPは,光ファイバをバンドルして整形されたイメージ伝送板であり,発生させた干渉縞を裏面に転送する.FOP裏面の干渉縞は,干渉性が非常に落ちるので,カメラレンズ+CCDカメラにより撮影する際に,各部の端面反射などにより発生していた不要な干渉縞群が観測されなくなった.また,CCDカメラを電子シャッタ式に交換したことや,ピエゾステージの移動方法の改良により,PS/PDI装置を構成するコンポーネントから振動発生源をほぼ完全に除去することができた.この結果,φ200mm,曲率半径1500mmの凹面鏡の連続計測における再現性は0.38nm rmsに達した. 下線部の結果を受けて,計測に用いている2つのファイバ光源同士の干渉縞を位相シフト計測することで,PS/PDI装置の現状での計測精度評価を行なった.この計測結果から,(1)FOPに起因した特有のパターン誤差,(2)建物の定常的な揺れに起因する誤差を除去した結果,装置としての計測精度は,ミラー計測の場合0.35nm rmsと見積もられた.これは,有限な計測時間において侵入してくると思われる,建物振動の突発的な成分の影響が消えないためと考えている. 本装置は,非球面度の高い面の計測に用いる際には,その計測結果が表面形状を直接には表わさない.そこで,計測結果から被計測面の形状を精度良く再現する手法として,Helmholz-Kirchhoff積分に基づく,位相解析プログラムを開発した.通常のPS/PDI計測で得られる初期位相分布データに加えて,干渉縞を発生させている被計測面からの診断光の強度分布をも計測し,同プログラムで解析することで,非球面度の高い被計測面の形状も計測(再現)できる手法を開発できた.今後,実用面(放物面など)を使って同手法の有効性を確認してゆく.
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