研究概要 |
本研究は,表面粗さ構造の非定常性とミクロからナノにわたるマルチスケール性に着目し,潤滑膜の局所的破断が巨視的な潤滑不良に発展する過程を実験・理論両面から検討し,混合潤滑における潤滑破綻の機構を解明することを目的としている.昨年度に引き続き,フォトエッチングによる微細テクスチャー表面の作成,超薄膜光干渉EHL膜測定装置による潤滑下の摩耗と潤滑状態の変化の追跡,非定常性・マルチスケール性をもつ表面の流体潤滑のモデル解析,潤滑膜中のキャビティー形成の数値シミュレーションを行うとともに,実験装置を改造して雰囲気気体の影響を検討した. 微細テクスチャー表面の点接触純滑り弾性流体潤滑の実験においては,表面に微細ピットを付与したガラス表を運動側表面とし,EHL膜部及び周辺をピットが通過する際の流体流れの変化と,これにともなう薄膜部の形成と摩耗の発生に至る過程について知見を得た.流体潤滑のモデル解析においては,前年度に行った凹凸の配置とサイズの記述方法にもとづき,微細ピットの配置パターンをウェーブレット変換係数の形で与え,その逆変換によって得られる表面形状について傾斜平面軸受の数値計算を行い,凹凸の空間配置による潤滑膜形成の違いを検討した.キャビティー形成の解析においては,流体潤滑膜のNavier-Stokes方程式に気液界面を追跡するLevel Set法を適用し,キャビティーの膜厚方向の形状と発生位置を求め,表面凹凸の形とキャビテーション圧力による違いを整理した.異なる雰囲気気体における潤滑実験においては,潤滑油への雰囲気気体の溶解性の違いによる明確な影響を確認することはできなかった.
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