研究概要 |
摩擦面にナノ粒子を供給して摩擦試験を行うと、供給したナノ粒子が摩擦面で固着・焼結されて表面に膜(トライボ膜)を生成する。このトライボ膜は、金属同士の凝着を抑制するという保護膜の役割を果たすため、たとえ摩擦面に粒子が無くても摩擦や摩耗を低減すると期待される。最終年である本年度では,供給する粒子の種類や粒径、トライボ膜生成時の荷重や雰囲気など、トライボ膜の生成条件がトライボ膜の生成状況や摩擦摩耗特性に及ぼす影響について明らかにし、最も優れたトライボ膜を生成するための条件を見出すことを目的として行った。その結果、以下のことが明らかになった。 (1)供給した粒子(Bi_2O_3、CuO、Fe_2O_3、SnO_2、CoO、Cu)の種類の影響では、Bi_2O_3粒子を供給して生成したトライボ膜が、マイルド摩耗領域が続いた摩擦距離が長く、最も耐摩耗性が優れ、トライボ膜の無い旋盤加工のみの試験片と比べて大幅に摩耗を低減できた。 (2)Bi_2O_3粒子によるトライボ膜は、比較的厚く、SEM観察によりその厚さは5.6μmと推測された。一方、Fe_2O_3粒子、SnO_2粒子、CoO粒子によるトライボ膜は薄く、マイルド摩耗領域が続いた摩擦距離は短かった。 (3)トライボ膜生成雰囲気(真空中、大気中)の影響では、Bi_2O_3粒子、CuO粒子とも真空中で生成したトライボ膜の方が表面凹凸は細かく、緻密で微細な形態を有しており、耐摩耗性に優れていた。 (4)トライボ膜生成荷重(9.8N、19.6N、39.2N)の影響では、Bi_2O_3粒子(ピン、ディスク)、Cu粒子(ディスク)いずれにおいても、荷重19.6Nで生成したトライボ膜が最も耐摩耗性が優れていた。これは、低荷重(9.8N)ではピンがディスクに十分に押し付けられず摩擦面の一部分にしかトライボ膜は生成されず、反対に高荷重(39.2N)では、生成したトライボ膜が摩耗により削り取られやすく均一なトライボ膜が生成されにくいためと考えられた。 以上をまとめると、真空中、荷重19.6NでBi_2O_3粒子を供給して生成したトライボ膜が最も優れた耐摩耗性を示すことが分かった。
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