研究概要 |
本研究では、成層回転乱流中での熱・スカラー多重拡散のメカニズムを、乱流理論(Rapid Distortion Theory(RDT))、数値シミュレーション(DNS)、乱流渦-波動モデル、及び、室内実験によって解明した。従来、二重拡散の問題は、流体運動の「安定性」の問題として考えられ、それが実際の「乱流輸送・拡散」にどう寄与するかについては殆んど研究されていない。これは、アクティブスカラーが熱一つだけの場合でも対象がすでに複雑であることが原因だが、例えば、上述の乱流理論(RDT)を用い、アクティブスカラーが二種以上の時の非定常解を得た。本研究では特に、(1)複数のアクティブスカラーの分子拡散係数の違い(熱:κ_T、濃度など第二のアクティブスカラー:κ_C)(2)温度勾配(dT/dy, y:鉛直座標)と濃度勾配(dC/dy)の(安定度(符号)を含めた)違い(3)主流の鉛直シアー(S=dU/dy)(4)成層回転乱流に特有の「波動成分」に二種のアクティブスカラーが与える効果が乱流フラックス(渦拡散係数)に与える影響を解明した。また、RDT理論、DNSの他、乱流を渦の集合体として捉え、波動の効果も考慮した「乱流渦一波動モデル」の構築とそれを用いた熱・スカラー輸送のシミュレーション、二重拡散の実験を行ない、理論及びDNSの結果について、メカニズム解明と定量性の両面から検証を行なった。線形理論であるRDTの理論的な結果は、数値計算及び実験の結果と良好な一致を示した。このことから、例えば海洋中深層での乱流のように乱流強度が比較的弱い場合、線形効果が重要であることがわかった。
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