研究概要 |
本研究課題第2年度の平成17年度には,前年度に引き続き直接数値シミュレーションとニュートン法を併用した独自の計算手法によって,壁面乱流として最も基本的な平面クエット系の乱流解と共存するサドル解を数値的に求めた.乱流の特性を忠実に再現する活発解をレイノルズ数Reを変化させながら追跡し,Re=290から560の範囲で活発解を得た.また,乱流状態よりも壁面摩擦抵抗が小さい静穏解についても,レイノルズ数を変化させながら追跡し,Re=230から720の範囲で静穏解を得た.これらのサドル解の性質を乱流状態の性質と比較しつつ,それらのレイノルズ数依存性を明らかにした.活発解の壁面摩擦係数,平均速度やRMS速度分布はRe=380から560の範囲で乱流解の対応する結果ときわめてよく一致した.また,静穏解はRe=230でサドル・ノード分岐を示し,2つの分枝をもつことがわかった.新たに発見したもう1つの分枝は相対的に乱流状態に近い性質をもつことが明らかになった.一方,活発解による熱輸送について解析を行ったところ,前述の活発解と乱流解との速度場の一致とは対照的に,高レイノルズ数Reサ550において活発周期運動により移流する温度の性質と乱流運動により移流するそれとに相違が現れることが明らかになった.高レイノルズ数では活発周期運動による熱輸送が乱流熱輸送よりも顕著になる.この結果は活発解の安定化による伝熱促進の可能性を示唆している. そこで,前年度に引き続きPyragasの外力法を適用して活発,静穏の両サドル解(不安定解)の安定化に取り組み,平面クエット流に対する数値実験において周期サドル解をRe=230から720のレイノルズ数範囲で安定化することに成功した.活発状態の安定化により伝熱促進,他方静穏状態の安定化により摩擦抵抗低減がそれぞれ実現された.
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