研究概要 |
本研究課題第3年度の平成18年度には,直接数値シミュレーションとニュートン法を併用した独自の計算法によって,壁面乱流あるいは熱対流乱流として最も基本的な,温度差を有する水平平板間クエット系の乱流解と共存するサドル解を数値的に求めた.前年度には浮力の影響のない受動的温度場の性質を検討したが,本年度はこの系において浮力の影響下での壁面乱流を調べ,乱流の特性を忠実に再現する不安定周期解をレイノルズ数Reおよびレイリー数Raを変化させながら追跡し,周期解と乱流の性質を比較した.その結果,浮力の影響下での壁面乱流においても,浮力の影響のない壁乱流と同様,周期解が乱流状態の運動量や熱の輸送特性や乱流構造を非常によく再現することが明らかになった. また,本年度から,この系に対して実験装置を設計製作し,温度勾配の導入により,壁乱流としては不安定であった周期運動を安定化することに取り組んだ.本実験の初年度となる本年度には,水平な加熱平板上で薄厚のポリエステルフィルムを一定速度で走行させることで,壁面による剪断と加熱による浮力の両作用を実験的に実現した.本装置の特性を調ドるため予備実験として流れの可視化を行い,非加熱時にはRe=360で乱流遷移が確認され,加熱時にはRa=2200で波数3のロール構造が確認された.従来より,平面クエット系の遷移レイノルズ数はRe=330から360程度であることが実験的に明らかにされており,またレイリー・ベナール系の臨界レイリー数および臨界波数は,それぞれ1708および3.117であることが線形安定性理論により示されている.本予備実験の結果は,非加熱時あるいは加熱時の結果がこれらの実験あるいは理論の結果とよく一致していることから,健全な実験装置が実現できたものと判断する.
|