研究概要 |
本研究では衝撃波をカプセル破壊に利用して位置制御ならびに封入されたナノ薬物粒子導入の向上に関する基礎的研究を行う.そのため,(1)ナノ粒子を含む含気マイクロカプセルの変形挙動の数値解析,(2)再生医工学へ応用への検討を行い,その内容と結果は以下のようになった. (1)ナノ粒子を含む含気マイクロカプセルの変形挙動の数値解析 開発された数値流体力学(CFD)計算コードを用いて1個のカプセルを伝播する衝撃波伝播のシミュレーションを,内部に気泡および粒子がある場合に拡張し,その伝播および気泡変形を数値予測する.このとき,マイクロカプセルの膜の力学的物性値(ヤング率,ポアソン比),膜厚,カプセルの大きさ,および封入する気泡の大きさを考慮して,入力となる衝撃波の周波数および最大圧力(または,マッハ数)を用いて動的に解析する.このとき計算手法としては,気泡変形のような大変形を伴う気液界面現象が存在するため,すでに開発しているALE法を用いて解析を行った.その結果,気泡変形挙動が大きい場合は計算が困難なものの,変形が小さいときには,衝撃波によって気泡変形を起こし界面(細胞膜)に影響を及ぼす可能性が示された. (2)再生医工学へ応用への検討 前年度までに開発した含気マイクロカプセルの中に含まれているナノ粒子に細胞成長因子(グロースファクタ}を被覆し,これを培養細胞の流路中に静止させ,衝撃波を作用させて,ナノ粒子を細胞に付着させる実験を行った.ところが,平成17年度まで行われた萌芽的研究および平成18年度までの本研究課題の再生医工学の基礎的な研究として,平面衝撃波を静止流体中の培養血管内皮細胞に作用させたところ,細胞成長因子を被覆したナノ粒子がなくても衝撃波によって細胞の増殖能を高めることが実験の結果明らかとなった.したがって,ナノ粒子導入効果以外に,含気マイクロカプセルを破壊する際に生じる衝撃波やマイクロジェットそのものによっても細胞増殖が可能となることが示され,その衝撃波波面の入射などの物理的機構解明が今後の課題となった.
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