研究概要 |
本研究課題のDDSへの応用に当たり重要な検討項目として, 1.DDSの際に重要となる血管壁や血栓近傍でのカプセルまたは細胞への刺激 2.衝撃波によるカプセル破壊および細胞破壊や刺激の数理シミュレーション技術の確立の2つがある.それぞれに関する結果として 1.血管内皮の培養細胞に水中平面衝撃波を作用させたところ,細胞の増殖能が増すことが示された.これから,例えば,腫瘍治療のためのDDSの際の衝撃波が抗腫瘍効果を低減させてしまう可能性も示されるが,本基礎的研究からは,圧力の立ち上がり周波数や圧力レベルによって.増殖能が変化することがわかったため,これらのパラメータを制御することで,薬物や遺伝子徐放のカプセル破壊のための衝撃波と細胞増殖のための衝撃波のパラメータの同時の最適化を図ることができると考えられる. 2.これまでの研究により開発されている理論の球シェルモデルを拡張し,周囲流体,細胞膜,細胞内部流体の3つの構造からなる半球状の細胞モデルを構築し,有限要素法を用いた数値計算から水中での圧力波や細胞膜・内部構造での応力波の伝播を解析し,その結果,平面衝撃波の立ち上がり周波数が高いほど,細胞膜上での応力波の大きさが大きくなり,結果として細胞への刺激が増すことがわかった. また,実用のための開発研究として,平成15年度までの基盤研究(B)に引き続き,各種の衝撃波生成法としては1.レーザを用いた衝撃波生成法2.よりサイズ径の小さい気泡内包マイクロカプセルの試作とその力学的特性の2つについて検討を行ったが,1に関しては,高出力のYagレーザによって衝撃波生成は行われたが,カテーテルへの応用を考え光ファイバーを用いたが光カップリングの損失がかなり大きく衝撃波生成の安定性がよくなかった,したがって,ファイバーを通さない直接入射の方法に変更した.2については,実験室レベルでは,直径が20-30μm程度の気泡,液体,カプセル壁の3層構造を作成することに成功した.このカプセルは,これまでの平成15年度までの研究に比べて直径が約30%程度となり,臓器でいうならば膀胱に適用できるサイズまで小さくすることに成功した.
|