研究概要 |
従来の熱CVD法による単層カーボンナノチューブの合成においては,炭素源として炭化水素か一酸化炭素を用いるのが普通であったが,この炭素源をアルコールに変えることで極めて高純度の単層ナノチューブが低温にて合成できる.本研究における,熱・光デバイス応用に関しては,高純度の単層カーボンナノチューブをシリコンや石英基板に直接合成することが望まれことから,ディップコート法でコバルトとモリブデンの酢酸塩のエタノール溶液をシリコンや石英基板に塗布し,これを熱酸化することで均一なナノ微粒子を基板上に合成したものを触媒とした.この触媒を熱CVD装置の加熱部にセットし,アルゴンに3%の水素を加えたガスで金属を還元し,その後真空にした後に,10Torr程度のアルコール蒸気を流すことで,高純度の単層カーボンナノチューブを石英およびシリコン基板の表面に合成した.さらに,CVD装置への空気の漏れを減らしかつ清浄に保つことで,触媒の活性を高めることができ,この条件で合成された単層カーボンナノチューブは,基板と垂直に配向することが明らかとなった.また,CVD合成中にレーザー光の吸収を測定することで垂直配向膜の厚さをリアルタイムに測定し,様々な実験条件における合成過程を整理し,成長のモデルを提案した.さらに,石英基板上に垂直配向した単層カーボンナノチューブを用いて,偏光ラマンや紫外・可視・近赤外偏光吸収の測定を行った.偏光ラマンによって,垂直に配向したナノチューブが特有のラジアルブリージングモード(RBM)のラマン散乱をもつことが明らかとなり,垂直配向状態を簡便に確認できるとともに,ナノチューブと直交する電場に励起された特異な吸収の存在が明らかとなった.
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