研究概要 |
昨年度製作した渦輪発生器と高圧燃焼器を改良し,初期圧を5気圧まで上げて,実験を行った.まず初めに,ピストンの駆動圧を一定にし,非燃焼場で渦輪直径,渦各直径,渦輪移動速度,最大周速度をPIVにより詳しく測定した.その結果,雰囲気圧力を増加させても渦輪直径,渦核直径はほとんど一定であるが,渦輪の移動速度,最大周速度は徐々に減少する傾向がみられた.次に,実際に渦輪に着火し,燃焼によりボルテックス・ブレイクダウンを誘起させ,それに伴う火炎の伝播速度を測定した.その結果,非燃焼場では存在しなかった流れが渦芯に沿って誘起され,その軸速度はほぼ最大周速度に等しいこと,また,それに付随して起きる火炎の移動速度も最大周速度にほぼ等しく,最大周速度の増加とともにほぼ直線的に増加するが,いずれの雰囲気圧力でも,両者の関係はほぼ同一の直線上に乗り,雰囲気圧力の影響はほとんど現れないことが明らかになった.この事実は,大気圧下の燃焼場で観察されるボルテックス・ブレイクダウン現象が,そのまま,エンジンの燃焼室のような高圧場でも成り立つことを示しており,渦により円滑な火炎伝播を促してノッキングを抑制する可能性が裏付けられた.また,火花点火機関にみたてた密閉容器内で渦輪を発生させ点火から最大圧力に到達するまでの時間を測定したところ,燃焼速度の遅い希薄混合気の高圧燃焼で顕著となる浮力の影響にうち勝って,いずれの圧力でもほぼ一定となり,実用燃焼器への適用が大いに期待できる結果が得られた.
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