研究概要 |
運動する質点が,接触して静止する第2,第3の質点に衝突する場合,質量の選定によっては第2の質点を静止させたままで,第1の質点の運動量を第3の質点の運動量に交換することができる.本研究は,この原理を慣性力だけでなく復元力が作用する構造物に適用し,構造物に働く衝撃力の低減を狙ったものである. 床衝撃音低減用のダンパーに関しては,研究実施計画書と対比して以下の研究成果を得た. ・木質フローリング床を模したアクリル板とコンクリートスラブからなる2重構造の模型床と,アクリル床に接触する構造の運動量変換型衝撃吸収ダンパーを設計・製作した. ・アクリル床に衝撃力を加えた場合に,床を支える4本の柱に伝わる衝撃力とコンクリートスラブ下室の音圧を,購入した荷重変換器,音圧レベル計,周波数分析器を用いて測定し,アクリル床の質量と衝撃吸収ダンパーの質量比をパラメータに,衝撃吸収ダンパーの低減効果を整理した. ・例えば質量比1の場合,床衝撃音をおよそ8dB低減でき,衝撃吸収ダンパーが極めて有効な手法であることを確認した. ・上記模型床システムの力学モデルを作成し,衝撃力と下室音圧を解析的に計算した.計算結果は実験結果を良く模擬できており,床衝撃音を低減する衝撃吸収ダンパーが設計可能なことを示した. 鍛造機の衝撃力低減用ダンパーに関しては,以下の研究実績を得た. ・住友重機械のプレス機械を見学し,実機を簡略化した模型鍛造機と衝撃吸収ダンパーの構造を検討した. ・上記鍛造機の力学モデルを作成し,第1質点の運動エネルギが,加工やその他の質点の運動エネルギに変換される比率を数値解析した. ・加工モデルの考え方にも依存するが,数値計算では加工に費やされるエネルギと衝撃吸収ダンパー(第3の質点)の運動エネルギーを最大化する衝撃吸収ダンパを設計可能性を見出した.
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