研究概要 |
本研究は,上肢切断者の運動機能再建を支援するために,切断者に残されたあらゆる可能性を自動的に探索し,さらに,新しい機能を開拓するような能動型適応システムの構築を目的として行なった.平成18年度に得られた研究成果は以下のとおりである. 1)時間変化する個性への適応機能を実現する動作意図推定法を確立した.16年度の自己組織化マップを用いた残存機能の能動的探索理論に加え,変化に応じて訓練データの取得削除,再学習を行うことで,長時間使用においても識別率を低下させず安定な識別が可能となった. 2)モバイル筋電義手システムの大幅な改良を行うために,小型UNIXサーバgumstix及びEMG取得用マイコンrobostixを用いて8動作識別器を開発した.これにより,高性能PCべ一スで開発された動作識別器を遜色なくモバイル筋電義手システムに実装することに成功し,最大8動作識別を0.1Hz以上の応答で制御可能となった. 3)さらに,これら個性適応機能を有するモバイル筋電義手の長期(6ヶ月)の連続使用環境を整備し,実験を開始した.現在,上肢前腕切断者(50代女性)に適用している. 4)前年度実施した脳機能計測(f-MRI)環境を整備し,モバイル義手の有する個性適応機能が使用者に与える影響の更なる調査を行った.その結果,義手へ適応したことにより,被験者の大脳一感覚運動野の賦活が明確化し,他の領野の賦活が不活性化した.また錯覚現象を再度確認した.これらは視覚と触覚情報の適切なフィードバックによるものだと考えられる. 残存機能の能動的探索理論の応用として,下半身麻痺者に残存する機能を用いた歩行補助システムを開発した.これは下肢麻痺者に残存する反射系を利用することで麻痺肢を駆動し,歩行改善を目指すものである.この結果,飛躍的に歩行が改善され歩行速度の向上が見られた.
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