本研究では、膜タンパク質を組み込むための人工平面脂質膜を、マイクロ流体システム上で、高効率かつ再現性良く再構成するマイクロデバイスおよびプロトコルの確立を目的としている。脂質平面膜は、イオンチャンネルやポンプ、レセプターなど重要な膜タンパク質の分析や、それらの相互作用解析などに重要なツールとなる。従って、マイクロ流体システムを利用して、多数の脂質平面膜をチップ上にアレイ状に再構成し、複数の膜タンパク質を一括解析するための膜タンパク質チップが実現すれば、ラボにおける膜タンパク質の基礎研究のみならず、イオンチャネルを利用した超高感度イオンセンサーや、高スループット創薬スクリーニングデバイスなどに応用が期待される。 平成16年度は、高精度のCAD/CAM自動切削装置により、アクリルプラスチック基板上にマイクロ流路、マイクロウェルおよび平面膜が形成されるためのテーパ状小孔(直径100μm程度)を集積化したデバイスを作製した。マイクロ流路に脂質分子の溶液およびバッファーを交互に導入することにより、脂質平面膜が自発的に形成される。テーパ状小孔のジオメトリを工夫し、また再構成のプロトコルに若干の変更を加えたことにより、従来10%以下であった膜再構成の再現性も50%以上に向上した。チャンネル電流の電気生理計測における外部ノイズも1pA程度に抑えられ、本デバイスが膜タンパク質の精密な電気計測に有効であることを示した。
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