研究概要 |
本研究は,絶縁チューブの中を水で満たした針電極と平板電極間に電圧を印加すると,静電力によって水が吐出する静電インクジェット現象の詳細なメカニズムを解明し,さらにこの現象を新しいインクジェットプリンタの印字ヘッドや生化学用微小液滴分析装置,およびマイクロスプレーなどへ工学的に応用することを目的とする.本年度実施内容とその成果は下記のとおりである。 (1)電極系、電源、平板電極の移動装置、および高速度カメラなどからなる実験装置を製作した。 (2)印加電圧によって液滴吐出モードが変化することを観測し、そのメカニズムを明らかにした。 (3)電極間にパルス電圧を印加することによって,水滴の吐出を制御することが可能であることを実証した.これは静電液滴形成現象をインクジェットプリンタの印字ヘッドに応用できる可能性を示唆するものであるが,実用に供するには,滴下される水滴の大きさを大幅に小さくすることなどが必要である. (4)本実験結果を応用して,実際に印字できることを実証した.しかし印字品質は,液滴の大きさや解像度だけでなく,着弾位置の再現性,サテライトドットの存在,インクや紙などの多くの要因に依存する.また,印字速度の観点からは,マルチノズル化が必須であるが,その場合には電極間のクロストークが懸念される.今後これらに関する検討を行う予定である. (5)制御電極によって着弾位置を制御する方法や、本技術を電子回路のパターニングに応用する方法などについても検討を開始した。
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