平成16年度は、イットリウム系超伝導線材の代わりのサファイア基板上イットリウム薄膜を用いた液体窒素温度でのクエンチ伝搬特性の実験研究及び温度可変交流クエンチ伝搬試験装置の設計・製作を行ったが、それに加えて、イットリウム系超伝導線材のクエンチ伝搬解析プログラムの開発に着手した。 サファイア基板上イットリウム薄膜を用いた液体窒素温度でのクエンチ伝搬特性の実験研究については、試料薄膜を液体窒素に浸漬冷却し、試料に流す電流を一定の割合で上昇させてクエンチさせるランプアップ試験、試料に交流電流の半周期を通電しピーク値を少しずつ上げてクエンチするピーク値を見出す交流過電流試験を行った。ランプアップ試験、交流過電流試験とも、臨界電流を超えた電流値でなければクエンチしないが、クエンチ電流値は電流変化率(上昇率)にはほとんど影響されなかった。 アメリカ合衆国マサチューセッツ工科大学を雨宮が訪問して、直流クエンチ伝搬特性に関する先行研究について調査した。その調査結果を踏まえて、GM冷凍機を用いた温度可変交流クエンチ伝搬試験装置の設計・製作を行った。この装置の試料空間は、既存の5T直流マグネット及び100mT交流マグネットのボアの中に挿入できるように設計した。これにより、これらの外部磁界下でのクエンチ伝搬特性について、次年度以降研究することが可能となった。 クエンチ伝搬解析プログラムについては、薄板近似に基づく有限要素電磁界解析と差分法による熱解析を連成した解析プログラムの開発に着手し初期データを得るに至った。
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