スピン分極率の高い強磁性体から高度に偏極したスピントンネル電流を流すことによりスピン拡散長の範囲でスピン蓄積あるいはスピン注入が生じる。フェルミ面直上のマジョリティースピンバンドにホールが存在する物質系では電圧を印加することにより、このマジョリティースピンバンドホールにスピンが注入されるために分極率が大きくなることが予想される。スピンを注入するスピン分極制御層として高スピン分極強磁性体であるFe_3O_4などのハーフメタル酸化物強磁性体が望ましい、スピン注入においてはスピン分極制御層とスピン注入制御層および磁気光学機能層の界面での格子整合性、ミキシングス、ラフネスが非常におおきな影響を与えると考えられる。スピンの散乱を防ぐためには界面整合性の良いシャープな界面が要求される。そこで各層積層後の最表面の組成および結晶性を低速電子線回折(LEED)・オージェ電子分光(AES)およびRHEED画像解析装置(新規購入)によってその場観察を行った。Fe系磁性層の電子状態を調べる方法として^<57>Feをプローブとした内部転換電子メスバウァー効果(CEMS)が非常に有効である。そこでまずMgO単結晶基板上に^<57>FeをプローブエピタキシャルFe極薄薄膜を作製し、その超微細磁気構造の解析を行った。次に^<57>FeをプローブエピタキシャルFe極薄薄膜を酸化した多層膜を作製し、超微細磁気構造を調べた。その結果、アモルファスFe酸化物が約40%形成されていることがわかった。平成17年度はFe極薄薄膜を酸化した多層膜を印加電圧下でCEMSの測定を行い。Fe合金の超微細磁気構造を明らかにし、スピン分極率を見積もる。
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