研究課題
基盤研究(B)
あらかじめ熱処理したNb_3Sn線材に対して、我々が見出した曲げ歪みを室温で繰り返し印加することで臨界電流特性が向上する機構を解明すること、及び嘱望されながら未だに成功していない熱処理済みNb_3Sn線材の撚線ケーブルを作製するプロセス開発の指針を得ることを目的に研究を実施してきた。繰り返し曲げ歪による臨界電流向上の応用のために大きなフープ力が印加できるCuNb補強のテストコイルを製作して、コイル形状での臨界電流の向上効果が有効であることを確認した。繰り返し曲げ歪を経験させた線材試料の長手方向Nb_3Snフィラメントに対してSEM観察を実施した。その結果、繰り返し曲げ歪みはNb_3Snラィラメントにマイクロクラックを導入することになるが線材の外側に補強材が配置された場合には0.8%の曲げ歪みまではマイクロクラックが急激に増加しないことが判明した。また、つくば高エネルギー加速器研究機構の高分解能粉末中性子回折装置を用いてNb_3Sn線材の内部をそのまま透過できる中性子回折実験を行った。その結果、繰り返し曲げ歪みの印加によりNb_3Sn線材の残留応力状態は軸方向も径方向も緩和されることが確認できた。臨界電流向上の機構解明として重要な結果を得られたことになる。繰り返し曲げ歪による臨界電流向上を応用するために、3撚線とステンレス線材4本との7本撚線である3+4撚線に適用させてみた。臨界電流の測定結果は、プーリーによる事前曲げ歪みを印加しないで作製した3撚線と3+4撚線の比較用サンプルに比べて、事前曲げ効果が撚線の状態で反映されることが分かった。
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