研究課題
基盤研究(B)
本研究は、我々が独自に考案した「ヘリコン波励起プラズマスパッタ(HWPS)法」を用いて新たな酸化物エレクトロニクスを開拓すべく、(1)MgZnO/ZnO量子井戸を形成し、紫外線領域の発光デバイスへの展開を図る、(2)環境に優しいβ-FeSi_2吸収層太陽電池のn層ないしは窓層としてITOを、また、薄さ1μmで18.9%という高変換効率を呈するCuGaInSe_2吸収層太陽電池の窓層としてZnO : Alを製膜し、損傷低減による飛躍的な変換効率向上を目指す、(3)酸化物誘電体多層膜反射鏡を形成し、微小共振器に応用する、(4)p形透明導電性酸化膜の形成を試みる、を最終目標として16年度に研究を開始した。本年度得られた成果のハイライトは以下の点である。(1)HWPSエピタキシー法を用いて、a面サファイヤ上へのZnOおよびMg_<0.06>Zn_<0.94>混晶のエピタキシャル成長に成功した。また、プラズマ分光測定を通じてMgZnO薄膜形成中にZnおよびMg原子からの強い発光が観測される事を見出した。従って、成長にはターゲットから飛び出すZn-O分子やMg-O分子だけでなく、カチオン原子が寄与している事を明らかにした。(2)HWPS法を用い、有機金属化学気相エピタキシー法でGaP基板に成長したp型CuGaS_2エピ膜上にn形ZnO : Al透明導電膜を形成し、それをダイオードとして電流-電圧特性と電流注入発光スペクトルを評価した。その結果、低温ではあるが鶯色の発光を観測した。この結果は、n-ZnO : Al層が確かにCuGaS_2層に電子を運んだことを示している。(3)SiO_2/ZrO_2誘電体多層膜分布ブラッグ反射鏡(DBR)の設計計算を行った。次に、ターゲットにSiとZrを用いて酸素を別導入する「反応性HWPS法」を用いてSiO_2およびZrO_2誘電体の単層膜を製膜した。それらの膜の平均二乗粗さは0.2nm程度であり、電子ビーム蒸着法で作製膜よりも優れていた。今後は多層膜形成を行う。(4)HWPSE法以外の成長法(レーザMBE法やMBE法)により成長されたZnO薄膜結晶を用い、点欠陥密度と成長温度・アニール条件の関係を明らかにすべく時間分解蛍光寿命測定と陽電子消滅測定を行った。その結果、i)高温成長により低Zn空孔密度化、ii)高温アニールにより低格子間欠陥密度化を行える事が明らかになった。
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Semiconductor Science and Technology (4月出版)
Applied Physics Letters 85(19)
ページ: 4403-4405
Applied Physics Letters 85(23)
ページ: 5586-5588