研究概要 |
本研究は,層状酸化物高温超伝導体Bi_2Sr_2CaCu_2O_y(BSCCO)単結晶(転移温度:〜85K)に内在する固有ジョセフソントンネル接合超格子(超伝導を担うCuO_2層(厚さ〜0.3nm)とその他の非超伝導層(厚さ〜1.2nm)が交互に自然積層した構造において,CuO_2超伝導層がその他の層を介してジョセフソン結合することにより形成されたジョセフソン接合超格子)をサブミクロン領域まで微小化することにより,同超格子のメゾスコピック現象に関する新たな機能を創出することを目指すのもであり,本年度は以下の成果を得た. (1)サブミクロン固有ジョセフソン接合の作製並びにその電流-電圧特性の評価 BSCCO単結晶を電子ビームリソグラフィによりサブミクロンサイズのメサ型素子(接合面積:0.49μm^2)に加工し,その電流-電圧特性を評価した.その結果,サブミクロン固有ジョセフソン接合の電流-電圧特性はヒステリシスを伴うブランチ構造を示し,概ね接合面積の大きい素子のそれと同様であるが,その臨界電流密度は1〜2桁小さくなることがわかった.これはジョセフソン効果と帯電効果が競合することに起因するものであり,固有ジョセフソン接合におけるメゾスコピック現象の一つとして捉えることができる. (2)サブミクロン固有ジョセフソン接合アレーにおける臨界電流揺らぎの評価 多数の接合が積層した固有ジョセフソン接合アレーにおける零電圧状態から電圧状態へのスイッチング電流分布を評価した.観測されたスイッチング電流分布を熱活性モデル理論により解析したところ,接合面積が大きい場合は,等価温度は2000Kとバス温度(4.2K)に比し極めて大きいのに対し,サブミクロン試料のそれは18Kとバス温度(4.2K)に近く,サブミクロン固有ジョセフソン接合アレーにおけるスイッチング電流は熱ゆらぎにより,決定されていることがわかった.
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