研究概要 |
本研究は、室温で強磁性・強誘電性の共存を示すとともに、大きな電気磁気効果を発現する全く新しい材料を開発し、電界による磁性制御に道を開くものある。この研究により以下の成果を得た。 1.強磁性・強誘電性共存酸化物における電界誘起磁化変化とその機構 (1)La,Mn : BaTiO_3およびBaTiO_3-LaMnO_3複合体における強磁性・強誘電性の共存は、強誘電性母在中または粒界への微量強磁性相(La,Ba)MnO_3の析出によるものである。 (2)BaTiO_3-LaMnO_3複合体は室温で大きな磁化を持つ強磁性と強誘電性を示す材料であり、LaMnO_3粒径の減少とともに、焼結体の密度、誘電特性は大幅に向上した。この系において、750V/mm当たり約25%と世界で初めての巨大な電界誘起磁化変化を観測した。 (3)複合体を強誘電絶縁層で挟んだBaTiO_3/LaMnO_3-BaTiO_3複合体/BaTiO_3構造において複合体単体と同じ大きさの電界誘起磁化変化を確認し、磁化変化は熱的効果ではなく電界による本質的現象であることを明らかにした。また、電界誘起磁化変化は分極による(La,Ba)MnO_3中のホール濃度の変化に起因する。 (4)BaTiO_3/(La,Ba)MnO_3/BaTiO_3薄膜構造において、4Vの電圧印加に対し2.2%の磁化変化を観察した。これにより、複合体で観察された電界誘起磁化変化が熱的効果ではなく、強磁性層の電界による変調であることが直接示された。 2.新たな強磁性・強誘電性共存材料の探査 (1)Pb(Zr,Ti)O_3-LaMnO_3複合セラミックスはBaTiO_3系に比べ高い強誘電性キュリー温度と大きな分極を持つ強磁性・強誘電性共存酸化物であり、期待どおり低電圧印加により大きな電界誘起磁化変化を示す(室温で0.4kV/mm印加に対し自発磁化変化30%)ことを世界で初めて明らかにした。
|