研究課題/領域番号 |
16360155
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
和田 修 神戸大学, 工学部, 教授 (90335422)
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研究分担者 |
喜多 隆 神戸大学, 工学部, 助教授 (10221186)
江川 満 株式会社富士通研究所, フォトノベルテクノロジー研究所, 主任研究員 (70213527)
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キーワード | 光通信デバイス / 量子ドット / 光アンプ / 超高速光スイッチ / 偏光依存性 / 長波長動作 |
研究概要 |
我々は、安価なGaAs基板上への成長、および通信波長帯での動作が可能で、かつ温度特性に優れた量子ドット材料を目指して、InAs量子ドットのサイズ、組成、歪みなどの多元的制御を目指して研究を進めている。昨年までに、原子組成に関しては原子層窒化を行う方法を提案し、既にフォトルミネッセンス発光波長として室温で1.3μmの長波長発光が実現できた。 本年度は、この原子層窒化機構の解明および窒化条件の最適化を行った。その結果、また発光強度の高温での劣化が、従来の量子ドットに比較して改善できることが分かった。また、透過電子顕微鏡(TEM)測定の結果から、窒化によって界面での原子の相互拡散が抑制され、通常のInAsドットの形状に比較してアスペクト比が大きいドットが形成されていることが判明し、長波長化と偏光特性の等方化にも寄与があることが分かった。一方、過度の窒化によってドット中に転移が発生することも明らかになり、窒化条件の最適化に役立つ情報が得られた。 一方、他のドットパラメータが光学特性に与える影響に注目して調べるため、従来の端面フォトルミネッセンス特性だけでなく、新しく強励起下で光利得及びその偏光特性を測定できるシステムを構築し、適用した。その結果、多層化によるドット形状の制御、すなわちコラムナドットの形状制御によって光利得の偏光無依存特性が実現出来ることを確かめた。又、同様にドット上のキャップ層の原子組成によって、すなわちドットの掛かる歪みの制御によって、偏光無依存光利得特性が実現できることが分かった。これらの偏光特性が光利得状態で実現できることは光アンプなどの量子ドット素子実用化にとって極めて重要な知見である。 さらに、高温での発光強度の劣化機構を検討し、キャップ層組成の異なる量子ドットの発光機構を比較検討した結果、界面の歪みによってキャリア移動経路が変化し発光劣化特性が変化することが明らかになった。この結果は発光特性の最適化に役立つ結果である。 これらによって、高性能光素子適用に向けた多元制御量子ドットの有用性が明らかになった。
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