研究課題/領域番号 |
16360162
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
雨宮 好仁 北海道大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (80250489)
|
研究分担者 |
福井 孝志 北海道大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (30240641)
浅井 哲也 北海道大学, 大学院・情報科学研究科, 助教授 (00312380)
廣瀬 哲也 北海道大学, 大学院・情報科学研究科, 助手
|
キーワード | 反応拡散系 / 量子ナノ / 単電子 / 非線形振動 / 散逸構造 / パターン / 自己組織化 / 生命ダイナミクス |
研究概要 |
反応拡散系とは、反応現象と拡散現象が混在した非平衡な化学反応系のことを言う。自然界で見られる生き生きとしたダイナミクス---たとえば秩序やリズムの発生,いろいろな形や模様の成長,生命現象に現れる各種の自己組織化---などは反応拡散系が示す挙動の典型例である。秩序ある時空間パターンの自律生成という反応拡散系の性質を利用して並列画像処理や自律分散制御を行うために、第一段階として以下の提案と確認を行った。 反応拡散系の構成要素は、非線形振動によるリズムを発生する反応セルである。単電子回路で非線形振動セルをつくるために量子ドット構造を利用する。すなわち量子ドットと基板との間にトンネル接合をつくり、その量子ドット回路に多重トンネル接合でバイアス電流を流す。クーロンブロッケードが成立する温度のもとで、量子ドット回路は単電子トンネル振動を生じて非線形振動セルとなる。振動の非線形特性は回路パラメータによって異なる。利用できる製作プロセスのもとで、情報処理に必要な非線形特性が生じるように量子ドット構造を設計した。 隣接する量子ドット非線形振動セルを結合して共鳴や引込みの現象を生じさせる。本来の反応拡散系では化学物質の拡散が結合の役割を演じている。一方、量子ドット反応拡散系では、拡散現象に類似した電子的な結合が必要になる。その方法としてドット間をキャパシタ結合することを考えた。キャパシタ直接結合で負の結合(抑制結合)が得られ、仲介振動子を介したキャパシタ間接結合で正の結合(協調結合)が得られる。なお反応拡散系の動作を得るためには結合に「遅れ要素」が必要となるが、これはトンネル待ち時間の効果によって自然に導入できる。以上のキャパシタ結合を量子ドット集積体上に実現するためのデバイス構造を設計した。計算機シミュレーションにより、反応拡散系としての非線形ダイナミクスが発現することを示した。
|