本研究の目的は、現状の最高性能の固体撮像素子に匹敵する高感度高S/N性能を有し、かつ5桁(100dB)を超える広いダイナミックレンジを持った固体撮像素子を提案しその実現技術の基礎を築くことである。 初年度の平成16年度には、完全空乏転送埋め込み型フォトダイオードに隣接して同一蓄積時間内に飽和を超える光電荷を蓄積する横型オーバーフロー容量を画素毎に設置した広ダイナミックレンジCMOSイメージセンサを試作した。本イメージセンサは画像フォーマット1/3インチ、有効画素数640×480、画素サイズ7.5μm角をもち、0.35μm 2P3M CMOSプロセスにより作成した。初年度内にカメラ撮像動作をさせることに成功し、基本諸特性を実験的に明らかにすることができた。試作したイメージセンサにおいて、画素ごとにひとつのフォトダイオードで受光し、飽和前信号および過飽和信号を画素内の同一のソースフォロアアンプで読み出し、蓄積時間分割露光をしないという基本コンセプトが想定どおり確認され、高感度・高S/N性能を維持しながらダイナミックレンジが拡大されており、かつ動画撮像特性にも優れ、また残像の発生もないことを実証した。ランダムノイズ0.15mVrms、固定パターンノイズ0.15mVrms、ダイナミックレンジ100dBの特性を達成できた。 本研究の成果は、2005 IEEE International Solid-State Circuits Conferenceなどにおいて発表した。
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