研究概要 |
神経活動から筋肉の活動を推定し,腕の姿勢や運動を推定することに成功した.昨年度までとは異なる運動タスクで,運動だけではなく,静止している時間を長く取ったタスクにおいても,腕の姿勢を脳の100個程度の神経活動から推定することに成功した.このとき,神経細胞の数を40個程度まで減らしても90%程度の精度で正確に推定することができた.これまで,同時にどれだけの数を計測したらよいかはよくわかっていなかったが,本研究の結果,30から40個程度の神経活動が計測できれば,腕の4自由度の運動を推定できる可能性があることがわかった. さらに,補足運動野の神経活動を加えると,姿勢制御中の推定精度が上がることがわかったが,現時点では,まだ,どこから計測すればよいかという知見についてははっきりとしたことがいえず,今後の課題である. 神経活動から腕の運動を推定するために,我々は腕の筋電信号を推定することを行っている.一般的に,余分な信号を推定することで,より曖昧性が増える傾向があるが,今回は,どの場所の神経活動と筋肉活動が関係しているかをあらかじめ調べることで,神経細胞の活動から直接,腕の運動を推定するよりも,逆に精度が高まることがわかった.あらかじめ,筋骨格系のモデルを作成しなければ,脊髄損傷の患者らには用いることができないが,これまでの人での実験から,一般的な筋骨格モデルは,健常者により作成が可能であることがわかっているため,機能的電気刺激などへの応用も可能であることがわかった. 今年度,多層のアレイ電極は作ることができなかったが,そのためのアンプ,信号処理方法,腕の運動の推定方法,それぞれの手法がほぼ確立できたため,今後は,現在のシステムを統合化して,チップ化することを行っていきたい.
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