研究概要 |
本研究は、二重らせん構造の塩基対の間に光学色素をインターカレートすることによって強い蛍光増幅効果や非線形光学効果をはじめとして、種々の光機能性の発現が可能なDNAを用いたバイオフォトニック機能薄膜をキーマテリアルとして、石英や半導体材料のみでは不可能であった強い非線形光学特性等を利用した光信号処理デバイスの実現を目的とする。DNAに関して、従来は材料研究や医療への応用研究が主であったため、これを積極的に光学デバイスへ応用しようとする研究はまだ始まったばかりである。従って、世界的にもまだ研究報告が少なく,材料の適用性を明確にしつつ光波制御素子および論理素子についてプロトタイプデバイスの実現を目指すことを、本研究の第一目標とする。平成18年度は、16年度の成果として得られたホトクロミック色素をドープによる屈折率変化の割合、脂質の違いによる屈折率の絶対値と屈折率変化、色素のDNAへのドーピング特性などをもとに、製作プロセスの検討から明らかとなった材料特性との関連を加味し,17年度に行った回折格子内蔵型デバイス1次試作の結果を踏まえ、ホトクロミック色素をドープ光制御型光路切替素子の限界解明と,光波制御および論理デバイスとして機能性発揮のために重要な回折格子内臓型デバイスの試作を重点的に取組む方針で研究を進めた。その結果,ホトクロミック色素をドープしたDNA-脂質複合体薄膜光制御型光路切替素子はmsオーダーの応答速度が期待できるものの,励起光強度が大きいことによる特性劣化があることが判明したが,バイアス光照射状態ではより小さな励起光強度でもms以下の応答が観測され,今後耐久性の向上が最重要課題であることが示された。また,回折格子内蔵型機能素子としてレーザ色素をDNA薄膜へのドーピングし,エッチレスグレーティング基板を用いることにより,薄膜DFBレーザとしてのレーザ発振を観測した。これは我々が知る限りDNA薄膜としては世界初のレーザ発振の実現である。今後,ドーピングの最適化と低しきい値化を進め,集積化によりSOAに見られるような機能素子の実現可能性を明らかにした。
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