研究概要 |
地中レーダによる地雷探知は地雷の材質に関係なく探知が可能であるが,地雷からの微弱な反射波が強力なクラッタ(不規則な地表面からの反射波や地中の不均質性に起因する散乱波)に埋もれてしまい,目標物体の微弱な信号検出に問題がある.この問題を解決し,安全で,作業効率の高い,限りなく100%に近い探知率を持つ新しい探知・処理技術の開発が望まれている. 長崎大学の研究グループでは平成18年度は平成17年度に開発した3次元合成開口処理の改良を行った.3次元合成開口処理を行うことにより,2次元合成開口処理に比べ精度の高い地雷検出が行えるが,処理時間が非常に長くなる.処理時間の短縮化を図るため,2段階の3次元合成開口処理を検討した.まず,第1段階では広い探査領域に対して荒い探査を行い,大きな重みが現れる領域を切り出す.次に,その領域に対して精査を行う.このようにマルチグリッドの概念を3次元合成開口処理に取り入れることにより処理時間の大幅な短縮(従来法で約60分の処理時間が約1分)が可能となった. 熊本大学の研究グループでは,平成18年度は,平成17年度に開発した検出・識別アルゴリズムと予備実験の結果を基に,更なる性能向上へ向けての新たな特徴の選択,識別アルゴリズムの開発を行った.具体的には種々の信号処理法により得られたターゲット信号から地雷の特徴を抽出し,最適な低次元特徴ベクトルを探った,その結果,ターゲットの厚みに対応する時間遅れが検出・識別に有効な特徴の一つであることを明らかにした.また,実際に地中レーダによる測定データとシミュレーションによる結果を比較して,その有効性・信頼性について検証を行った.まだ十分な量の計測データは得られていないが,ほぼシミュレーションと同様の結果になることが確認できた.また,シミュレーション結果と実験値を比較するには,実際の地表面の粗さの統計的性質を調べる必要がある.これについても検討を行い,記録長と推定精度の関係を解析的に明らかにした.
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