研究課題
基盤研究(B)
電力線通信は、商用電力を供給するために敷設された家庭内外の電力線を通信線として用いることにより、データ伝送を行なうものである。現行の割当周波数である10kHz〜450kHzを2〜30MHzに拡大することにより、数10Mbps〜数100Mbps程度の高速通信が可能となる。しかし、2〜30MHz周波数帯には各種の重要な無線通信システムが存在するため、電力線通信システムからの漏洩電波を低減して、それらのシステムに影響を与えないように必要がある。そのために本研究では、電力線から電波が漏洩するメカニズムを定量的に明確にするために、電磁界解析の手法の一つであるモーメント法で簡単な電力線のモデルを構成して解析した結果、漏洩電界の測定結果と一致することを確認した。一方、電力線を4端子対の回路網として近似して、電力線の減衰量や平衡度を規定し、それから漏洩電界を求める手法も検討した結果、これについても測定値と一致することを確認した。これらの結果より、分岐を含まない簡単な電力線から漏洩する電界については、理論的に計算できることを確認した。電力線からの漏洩電界を測定するためには、短波帯(3〜30MHz)の電波が吸収可能な電波無響室が必要である。ところが、一般の電磁妨害波測定用の電波無響室は、30MHz以上の周波数で使用されるため、短波帯での特性はあまり良好ではない。それを改善するために、フェライトタイル電波吸収体の施工方法の改良を試みた。今までの施工方法では、フェライトタイル間に微細な隙間が生じるが、この隙間がフェライト電波吸収体の本来の特性、特に低周波数特性を劣化させることはよく知られている。この問題を改善するために、フェライトタイル間を覆うように短冊状のフェライトタイルを配置することにより、吸収特性を改善することを検討した。角形同軸管を用いてフェライト電波吸収体の反射特性を測定した結果、30MHz以下の周波数帯域で3dB程度の吸収特性改善効果が得られた。今後、フェライトの素材特性そのものの特性改善を試みる予定である。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
2005 IEEE EMC International Symposium, Chicago 発表予定
電子情報通信学会誌 Vol.88,No.3
ページ: 170-175
2004 International Symposium on Electromagnetic Compatibility, Sendai 4C3-3
ページ: 845-848
平成16年電気学会電子・情報・システム部門大会 OS1-5
ページ: 278-283