研究概要 |
制御システムの高機能化、高性能化に伴い、制御システムに対する設計論が従来の安定性や性能向上の追求からセンサやアクチュエータ等、システム要素の故障に対しても適応可能となるような信頼性の向上を目指した設計論へと変化しつつある。本研究では、(1)故障原因を特定する故障診断問題と(2)検出された故障に応じて制御器や制御系の構造を適切に切り替え、正常な状態に戻すエラーリカバリ問題、(3)人間が関与することを想定して,人間の行動モデルおよびそれに基づく行動予測機構の開発,に取り組む。本年度は具体的に、故障診断問題と人間の行動予測機構の開発に取り組んだ。具体的には、1.フォールトトレラントな制御系の設計と無人宇宙往還機への応用,2.連続/離散ハイブリッドシステムモデルに基づく行動モデルの開発,3.故障発生後の制御器切り替え戦略の提案,4.電動機における巻線故障の診断,5.時間つきマルコフモデルによるPLC駆動型制御器の故障診断,を行った。1.3.に関しては,故障に伴う制御性能の劣化を最小限に抑える,という視点から制御器切り替え戦略を提案した.2.については,行動解析をハイブリッドシステムの同定問題として定式化し,判断と動作が混在した行動モデルの開発に成功した.4.5に関しては,マルコフモデルをベースとした統計確率モデルに基づいたシステムのモデル化,故障診断器の設計を提案し,いずれも実験によりその有用性を検証した.これらの成果は学術雑誌上で何編か公開済みまたは,公開予定である。今後の課題としては,より複雑な対象を想定した実験や産業界との応用に基づく実現可能性の検証があげられる.
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