研究課題
基盤研究(B)
近年、多様な材質の多層膜厚を非接触で計測する技術の確立が望まれている。我々は、多様な材質の膜厚を光学的に非接触で計測する手法として光熱変換効果に基づく方式を提案している。本手法では、試料表面をナノ秒パルスレーザで照射し、デルタ関数的に光熱変換効果を生じさせることにより数百MHz帯域までの多様な周波数を有する弾性波を一度に励起させる。この励起された多様な周波数の弾性波の内、音響インピーダンス界面間の共振現象により膜厚に応じた周波数成分のみが選択的に残る。この共振周波数を光学的な非接触高感度変位計測手法で検出し、膜厚を算出する。つまり本手法は、光を吸収する材質ならば膜厚を非接触で計測することが可能となる。我々は、多様な材質へ適用するために、ナノ秒パルスレーザとして極短紫外線であるArFエキシマレーザ(波長:193nm、パルス幅:10nsec。)を用いることにした。ArFエキシマレーザは、フッ化カルシュームなど特定な材質を除いては、可視光領域では透明な素材であっても最表面層で大半の光エネルギーが吸収される。つまり、液晶ディスプレイのガラス基板のように厚みが1mm程度と厚く、薄膜干渉では計測不可能であった厚い膜厚も計測可能となる。我々はこれまで、単層膜の非接触膜厚計測技術を確立してきた。しかし、実際の製品レベルにおいては単層膜だけでなく多種多様な材質をコーティングした機能性多層膜の検査技術が必要である。本手法では、パルスレーザ照射により生じる弾性波の膜厚に応じた共振周波数から膜厚を算出する。そのため、多層膜においても各層の膜厚に応じた共振周波数を分離して検出することにより各層の膜厚を算出することができる。ここで、各層の共振周波数は隣接する層の相対的な音響インピーダンス差に起因する共振モードを解析することで求まる。
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