研究概要 |
高齢化、少子化の進展が著しい中で、人間の生活を支援・補助するロボット技術の開発が緊急課題となっている。特に人への支援・補助用途では人間と環境との干渉は不可避であるが,この干渉を積極的に考慮したロボット技術は新たな領域である。人間と機械の干渉の典型的な事例として、医用CPM装置がある。CPM(持続的他動運動)は、外傷後或いは手術後の関節を外部から連続的に動かして回復を促進させる整形外科における治療法である。従来のギブスで固定する治療法に比し、拘縮の予防・関節可動域の確保、損傷関節組織の治癒の促進など動物実験や下肢疾患の臨床例で効果が確認されているが、上肢疾患用の臨床例はない。また、従来のCPM装置は低自由度の運動機構であるため、患者の上腕構造と適合した回復訓練は医師やリハビリ士に依存している. 本研究では、バイオメカニクスに基づく高機能CPMシステムの研究・開発を通して人間と機械の干渉力をフレキシブルに制御する制御手法に関して以下の研究を行った。 1.バイオメカニクスに基づくCPM装置の製作 肘部の屈曲・伸展および上腕部の回内・回外運動が可能な上肢用CPMシステムを設計・開発し、模擬実験による有効性を検証した。 2.人間の上肢運動メカニズムの明確化 新たに開発したCPM装置が屈曲・伸展中に自然に行われる回内・回外を計測できることを利用し、CPM構造に特化した逆運動学を提案し、前腕骨格モデルによる各関節動作の分析を行った。 3.痛みのモデル化とフレキシブル制御系の設計 健常者の自然なCPM運動を規範とするインピーダンス制御系を構成し、模擬被験者により有効性を検証した。また表面痛に関する痛みのモデル化を行い、シミュレーションにより有効性を検証した。 4.まとめおよび報告書の作成 本研究で開発したバイオメカニクスに基づくCPM装置ならびに痛みモデルを用いた制御系設計法について総括し,報告書を作成した。
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