研究概要 |
本年度の研究では,(a)材料選定の段階,(b)実現象を模擬した供試体の作製段階,(c)電気泳動法を応用した境界面の界面化学の研究段階,(d)各種分析手法を用いた界面化学の研究段階に関して,順次研究を進めた. 材料選定における異種材料として,エポキシ樹脂塗装およびベントナイト砂混合土を主体的に選定した.エポキシ樹脂塗装したコンクリートは,従来より塩水に浸漬した供試体を用いた.したがって,本研究は主体的にベントナイト砂混合について実施した.モルタルまたはコンクリートとの複合供試体を作製した.供試体の寸法は,直径100mmで厚さが50から100mmまで変化させた円盤形として実験を行った.電気泳動試験は,土木学会規準試験(JSCE-G571-2003)に準拠して実施し,本研究課題の趣旨に併せて,溶液の種類,印加電圧などを変更して行った.電気泳動試験後は,粉末X線回折,EPMAを実施した.ベントナイト砂混合土の変質を調べるために,膨潤力試験,浸出陽イオン量測定を行った. 電気量を指標として,直流定電圧が15Vを約40日間印加させた複合供試体に対して,その界面近傍の様子をEPMAで調べるために,先ずEPMAの測定手法の確立を目指し実験を行った.その結果,エポキシ樹脂塗装したコンクリート界面だけでなく,ベントナイト砂混合土に対しても,測定手法がほぼ確立された.また,界面と陰極との距離を変化させることの影響を調べた.その結果,両者の距離が大きいほど,界面を通じてコンクリートから主としてカルシウムイオンがベントナイト砂混合土に移動する現象を,定量的に捉えることができた.このことはEMPAでの定性的な結果とも一致した. コンクリート中のイオン拡散の現象を調べるために,モルタルの拡散実験を実施した.そして,塩化物イオンとナトリウムイオンまたはカリウムイオンとの相互作用を調べた.モルタル中では,陰イオンと陽イオンは,対イオンとして移動することがないことを確認した.この理由を説明するために,分配係数の考え方や細孔構造の電気的な性質について考察した.異種材料との界面近傍付近における陰イオンと陽イオンの移動現象を把握するために必要な基礎調査として,今後の参考になる結果を得た.
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