研究概要 |
表面保護工で使用されるポリマーセメントモルタルとコンクリートから成る2層系複合構造体を作製し,電気泳動試験から塩化物イオンの電気泳動現象を解明した.表面被覆材は,ポリマー結合材比が22%の標準形のポリマーセメントモルタルまたはひび割れ追従性を有する柔軟形のポリマーセメントモルタルの2種類を選定した.コンクリートは,W/Cが55または65%で普通ポルトランドセメントを用いた普通コンクリート,セメントの一部をフライアッシュで置換したフライアッシュコンクリートをそれぞれ用いた.表面被覆材と接触する面は,実構造物を模擬して,型枠面とした. 電気泳動試験は,ポリマーセメントモルタル単体,コンクリート単体そして表面被覆コンクリートの3水準の供試体をそれぞれ試験して,実効拡散係数を比較した.表面被覆コンクリートの実効拡散係数は,ポリマーセメントモルタルを施工することで,コンクリート単体よりも小さくなり,表面被覆による効果が顕著であった.また,ポリマーセメントモルタル単体と比較すると,複合構造体の実効拡散係数は大きく,その序列はコンクリート単体の実効拡散係数の序列と同一であった.実験結果は,定常状態で電気泳動するイオンの移動モデルを2層系複合構造体に対して構築し,表面被覆材の実効拡散係数およびその施工厚さから合理的に説明されることを明らかにした. 異種材料としてベントナイト砂混合土を用いた研究では,既往の研究に従いコンクリートとベントナイト砂混合土から成る2層系複合構造体に対して電気泳動試験を実施した.そして,コンクリートと接するベントナイト砂混合土の膨潤力の低下を定量的に示した.また,複合構造体に対して,粉末X線回折,熱分析,EPMA, pHの各種分析を行い,塩化物イオン,カルシウムイオン,ナトリウムイオンの分布もを調べて,界面におけるイオンの濃縮および移動現象を詳細に考察した.
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