研究概要 |
本研究の成果は以下の4つの項目に分類することができる. (1)鉄筋破断による劣化事例調査---石川県内では,平成18年の時点で,せん断補強筋および帯鉄筋に関しては,橋脚の枕梁6基,柱部2基,フーチング4基で,橋台の本体4基,フーチング4基で,鉄筋破断が確認された.主鉄筋に関しては,橋脚の枕梁3基で圧接部のはずれ(破断面は平滑であり,施工不良が原因と推察される)を確認した.橋脚以外では,鉄筋コンクリート堤体2基,トンネル坑口1基で,同様な鉄筋破断を確認した. (2)鉄筋破断のメカニズム解明---破断した鉄筋は鉄筋の径がD16からD32の範囲の電炉鉄筋であった.鉄筋の曲げ加工部の破断面は,絞りがなく,脆性的であった.鉄筋破断面は3つの破壊過程(1次亀裂,2次亀裂および3次亀裂の形成とそれらの進展過程)に分類することができ,ASRによる鉄筋破断のメカニズムを提案した. (3)ASR劣化橋梁のアセットマネージメント---橋梁のアセットマネージメントには,橋梁の劣化度,補修・補強の要否,費用の算定などを記載したデータベースの作成が不可欠となる.能登有料道路以外の,能登地方の橋梁(昭和61年以前のものを対象)のASR発生状況を詳細に調べた結果,奥能登では橋梁数347の内の166のもの(48%),中能登では橋梁数263の内のもの(23%),加賀では橋梁数417の内の64のもの(15%)に,ASRによる劣化の兆候があることが判明した. (4)ASR劣化橋脚の補強およびモニタリングの技術開発---ASR劣化橋脚では,鉄筋破断が発生した枕梁を鋼製支保工で仮受けした後に,打替えることに決めた.ASR劣化橋脚の補強技術は未確立であるので,モニタリングを同時に実施し,その計測結果を今後の補強設計に反映させた.現在も,能登有料道路では打替えを実施した橋脚や補強したフーチング,供用中のトンネルなどで自動計測によるモニタリングを実施している.
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