研究概要 |
本年度は,前年度に開発された地域気象モデルと局地風モデルの統合を行った.具体的には天気予報の結果を初期条件ならびに境界条件として地域気象モデルをその内側に順次ネスティングさせ,1年分の地域風況に関する時系列計算を行う.地域風況には大地形や局地循環の効果は含まれているが,1〜2kmの格子で解像できない小地形の効果は考慮されていない.小地形の影響を考慮するために非線形風況予測モデルMASCOTを用い,地域風況から局所風況への変換を行う.本システムの予測精度を明らかにするため,竜飛ウインドパークにある10台の大型風車から得られた風向風速の時系列データ並び法皇山脈上の送電鉄塔から得られる風向・風速を解析した.その結果,年平均風速における予測精度は10%以内であることが明らかとなった. 風環境データベースの作成では,全球モデルの客観解析結果(分解空間能:約50km)から100倍以上の空間分解能を有するメッシュを用い,時々刻々に変化する風速・風向,気温,気圧などの気象要素をシミュレートし,これにより広域風環境情報を求め,データベース化した.また微細な地形の影響を考慮できる局地風モデルを用いて,広域風環境情報を10メートル分解能の局所的な風環境情報に変換することにより,海陸風や山谷風などの局地循環の効果と微細な地形の効果を考慮した局所的な風環境情報を求めることを可能にした. 本システムを用いて,関東地方における洋上風力賦存量の評価,東北地方における鉄道沿線強風発生地点の抽出,送電線鉄塔設置場所の風速評価に適用し,社会基盤施設の安全性・耐久性評価に貢献した.
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