土壌汚染対策法の施行により、土地売買の際に土壌汚染が発見された場合の浄化が義務付けられたため、汚染浄化の需要が高まってきている。本研究は特に油による土壌汚染に着目し、この浄化の際にいかなる浄化法を用いたとしても重要となる、地盤内の水・油・空気の多相流特性を把握することを目的とするものである。 昨年度までに、「平衡土柱法による水・油・空気3相系保持特性試験装置」および、「空気吸引不飽和カラム試験による水・油・空気3相系透過性試験装置」を開発した。今年度は、昨年までのカラム試験から実地盤に近づくために小型2次元土槽を用いた実験を行った。その結果、従来の揚水法による汚染油の回収の際に、現場において見られていた、回収井戸付近は油が無いのに3mほど離れたところから先に油固めっている状況と酷似した実験結果が得られた。観察の結果、揚水井戸内の水面によって井戸近傍に形成される水分毛管上昇帯のせりあがりがバリアとなり、井戸には油が流入しづらくなっていることがわかった。そこで、回収井戸のスクリーンを全面に設けず、井戸内水面よりも若干上方の位置に部分スリットを設けることで毛管上昇帯のせりあがりを発生しないように工夫したところ、回収効率を向上させることができた。この他にも、部分貫入井戸で、しかも井戸底面閉塞かつ井戸内の水位が浅い場合には、ここにある閾値を超えた油量が流入するとバランスが崩れて井戸内の水分が毛管上昇帯の吸い上げる力で地盤側に流出し、井戸内の水面低下・場合によっては水分消失といった現象が起こることがわかった。 今後さらに土中で油の透過性、保持特性または回収方法に関する実験を行ない、実地盤における浄化に役立てたいと考えている。
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