研究概要 |
1.現地調査に基づく横ずれ断層系ならびに周辺変形帯の実態把握 三浦半島の海食台において,断層長数10〜数100mの断層を対象とした現地調査を実施した結果,岩盤における横ずれ断層系の形態に関して,水平面においては基本的に雁行状断層群(リーデル剪断)の発達が顕著であるものの,鉛直断面では,フラワー構造の他に,デュープレックス状の構造も観察された.文献調査の結果からも,横ずれ断層系の3次元構造として,螺旋曲面状の雁行状断層群の他,3Dデュープレックスも重要な構造と考えられる. 2.断層模型による横ずれ断層変位に伴う岩盤の変形,破壊に関する実験的検討 (1)横ずれ断層変位に伴う模擬岩盤の変形・破壊過程を医療用X線CTにより3次元的に観察するため,変位制御式横ずれ断層模型実験装置を製作した.実験において,底盤の横ずれ断層変位量の増大に伴い,石膏・豊浦標準砂・水を混合して作成した層厚5cmの模擬岩盤に,螺旋曲面状の雁行状せん断面が形成され,その後,せん断面群に囲まれた地盤ブロックの回転と突起部衝突による岩盤の破砕が認められた.今回の実験において,石膏/豊浦標準砂の量比の増大に伴い,1)変位初期段階における雁行状せん断面群の,底盤の断層の走向に対する斜交角度の減少とせん断面分布幅の減少,2)断層変位量が大きい段階での岩盤破壊ゾーンの幅の増大,などの傾向が認められた. (2)横ずれ断層変位に伴う岩石の変形・破壊状況を検討するため,剛性三軸試験装置などの整備・調整を行った.あらかじめ横ずれ断層を模擬した切断面を入れた花崗岩のブロックに10〜20MPaの拘束圧下で変位を与えることにより,厚さ5〜10mmの凝灰岩の岩石板に破壊面を発生させることに成功した.X線CTによる観察結果から,この破壊面は横ずれ断層の変位に伴い発生することが知られるリーデルせん断に相当する可能性が指摘される.
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