研究概要 |
近年、弱非線形安定解析や数値計算を用いた研究によって移動床現象の解明が飛躍的に進んでいる.しかし一方で強非線形性に由来する多くの現象が依然として未解明のまま残されており、本研究ではこのうちの代表的な現象を明らかにした. 清水は2次元非静水圧の流れの運動方程式、連続式と乱流モデルおよび非平衡の流砂量式を組み合わせ、河床波の発生、発達、移動、減衰を再現することに成功した。特に、河床波の発達に伴い河床抵抗が変化し、いわゆる粗度が変化することを物理モデルで予測することに成功したのは世界的にも初めてであり、工学的に極めて重要な成果である. 泉は,平均河床勾配が小さく流速係数が大きい領域においてデューン-平坦床遷移は亜臨界分岐となることが明らかにした,また,線形安定解析を用いた水路群の形成モデルを改良し,任意形状の斜面に適用できるよう理論を拡張し、斜面の曲率が適当な範囲にあるとき,水深の1000倍程度の水路群が生じることを明らかにした. 渡邊は非定常流量条件下での複列砂州の挙動を明らかにするため,水理実験および弱非線形安定解析を実施した.その結果,平常時の流路形状が洪水時に形成される中規模河床波の形状に強く支配されていることを明らかにした. 竹林は数値解析と理論解析により,混合砂河床においては,複数の特性量が異なる伝播速度で伝播し,砂州は発生と消滅を繰り返すことを明らかにした. 渡部は固液同時速度計測システムを開発し,デューン上の浮遊砂及び流体の同時速度相関から相間相互作用を算定することに成功した.移動床上の底面砂の浮遊イベント発生時における砂-流体相互作用について,画像計測実験をベースとした統計評価を行った.固定床と比べ移動床上では,浮遊砂の存在のため,流体の乱れエネルギーが著しく増加し,この増加した乱れエネルギーが底面上を砂を撹乱しさらに砂の浮遊を促進する再帰的乱れ-浮遊過程がデューン近傍の流れ場を支配することが明らかとなった. 本研究は,近年急速な発展を遂げた非線形力学分野の理論解析と数値解析における成果を取り入れ,世界でも最先端の成果が得られ、今後の当分野の研究の発展のための重要な第1歩となった.
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